離婚しても苗字を変えない方法|婚氏続称制度をわかりやすく解説

離婚届を書きながら、ふとペンが止まる。「苗字、どうしよう——」。

お子さんの学校の名札、職場の名刺、10年以上使ってきた銀行口座。旧姓に戻せば、それらすべてを変更しなければなりません。一方で、元配偶者の姓を名乗り続けることへの複雑な感情もある。あなたも今、そんな板挟みの中にいるのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、離婚後も婚姻時の苗字を名乗り続けることは、法律で認められた権利です。 しかも届出だけで完了し、相手の同意も不要です。

この記事では、離婚後に苗字を変えないための「婚氏続称制度」の仕組みと届出方法、メリット・デメリット、そして子供の苗字との関係まで詳しく解説します。


離婚後も婚姻時の苗字を名乗れる「婚氏続称制度」とは

婚氏続称(こんしぞくしょう)制度とは、離婚後も結婚中に名乗っていた苗字を引き続き使うことができる制度です(民法第767条第2項)。

たとえば、結婚前の旧姓が「田中」で、結婚して「山田」になった方が離婚しても、届出をすれば「山田」のまま生活を続けることができます。

この制度を利用するために相手の同意は不要です。届出さえすれば、自分の意思だけで決定できます。


届出の方法と期限

届出期限:離婚後3ヶ月以内

「離婚の際に称していた氏を称する届」(通称:婚氏続称届)を、離婚後3ヶ月以内に市区町村役場へ提出します。

項目 内容
届出先 届出人の本籍地または住所地の市区町村役場
届出期限 離婚の日から3ヶ月以内
届出人 婚姻によって氏を改めた本人
必要書類 婚氏続称届(役場に用紙あり)、戸籍謄本(本籍地以外で届出する場合)
費用 無料
相手の同意 不要

注意:3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合は、家庭裁判所への「氏の変更許可」の申立が必要になります。やむを得ない事由が認められれば変更可能ですが、手続きが複雑になるため、期限内の届出を強くおすすめします。


苗字を変えない場合のメリット・デメリット

メリット

メリット 詳細
社会生活の継続性 職場、取引先、友人関係で苗字変更の説明が不要。「離婚したの?」と聞かれる場面を減らせる
各種名義変更の手間が省ける 銀行口座、クレジットカード、運転免許証、パスポートなどの名義変更が不要
子供と同じ苗字でいられる 子供が婚姻時の姓を名乗っている場合、親子で同じ苗字を維持できる
キャリアの一貫性 論文、著書、資格証など、旧姓に戻すと経歴との紐づけが複雑になるケースを回避

デメリット

デメリット 詳細
元配偶者と同じ苗字が続く 心理的に「区切りがつかない」と感じる方もいる
再婚時の戸籍記載 婚氏続称した苗字から再婚相手の苗字に変わる場合、戸籍の記載が複雑になることがある
後から旧姓に戻しにくい 一度婚氏続称の届出をすると、旧姓に戻すには家庭裁判所の許可が必要
周囲からの誤解 「まだ離婚していないのでは」と誤解されるケースもまれにある

婚氏続称のメリット・デメリットを把握したところで、次に気になるのが「子供の苗字はどうなるのか」という問題です。ここは手続きを間違えやすいポイントなので、しっかり確認しておきましょう。

子供の苗字との関係

ここは特に注意が必要なポイントです。

婚氏続称した場合

親権者が婚氏続称を選んだ場合、親権者と子供の苗字は同じままです。ただし、戸籍上は親権者が新しい戸籍を編製するため、子供を自分の戸籍に入れるには「入籍届」の提出が必要です。

旧姓に戻した場合

親権者が旧姓に戻すと、子供との苗字が異なる状態になります。子供の苗字を親権者と同じにするには、以下の手続きが必要です。

  • 家庭裁判所への「子の氏の変更許可申立」
  • 許可審判の取得
  • 市区町村役場への「入籍届」の提出
  • この手続きは親権者が法定代理人として行えますが、子供が15歳以上の場合は子供本人が申立人になります。

    子供の気持ちも大切に

    とくに学齢期のお子さんは、苗字の変更に敏感です。「友達に何て説明しよう」と不安を感じるお子さんもいます。可能であれば、事前にお子さんの気持ちを聞き、学校への届出のタイミングなども配慮してあげてください。


    旧姓に戻したい場合の手続き

    婚氏続称を選ばず旧姓に戻す場合は、離婚届の提出だけで自動的に旧姓に戻ります(特別な届出は不要)。

    ただし、一度婚氏続称の届出をした後に旧姓に戻したくなった場合は、家庭裁判所に「氏の変更許可」を申し立てる必要があります。

    項目 内容
    申立先 住所地の家庭裁判所
    必要なもの 申立書、戸籍謄本、理由を説明する資料
    費用 収入印紙800円 + 郵便切手
    許可の基準 「やむを得ない事由」があること

    「やむを得ない事由」の判断は裁判所によって異なりますが、婚氏続称後の年数が短いほど認められやすい傾向があります。迷っている方は、まず旧姓に戻しておき、必要があれば婚姻時の姓を通称として使用するという選択肢もあります。


    まとめ — 苗字は自分で選べる。大事なのは新生活のスタート

    離婚後の苗字をどうするかは、あなた自身が自由に決めてよいことです。

    「子供のために変えない」「キャリアのために変えない」「心機一転、旧姓に戻す」——どの選択にも正解・不正解はありません。

    大切なのは、苗字の問題に必要以上に悩みすぎないこと。届出の期限(3ヶ月以内)だけは忘れずに、あなたとお子さんにとって最善の選択をしてください。

    新しい名前であっても、これまでの名前であっても、あなたはあなたです。新生活のスタートを、応援しています。

    今日できる最初のアクション:まだ迷っている方は、婚氏続称届の用紙をお住まいの市区町村役場のウェブサイトからダウンロードしておきましょう。手元に用紙があるだけで、期限(3ヶ月)が迫ったときに慌てずに済みます。


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    免責事項: この記事は2026年3月時点の情報にもとづいて作成しています。法制度は改正される場合がありますので、最新の情報は市区町村役場や法務局、弁護士等の専門家にご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。

    出典・参考:

    • 民法第767条(離婚による復氏等)
    • 法務省「届出についてのご案内」(https://www.moj.go.jp/)
    • 裁判所「氏の変更許可」(https://www.courts.go.jp/)

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